第十雄洋丸衝突事件 事故の原因は人災!アンビリバボーな自衛隊の作戦とは?

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あわや神奈川県横須賀市が火の海に!?

1974年(昭和49年)11月9日、東京湾で当時日本最大級のLPGタンカー「第十雄洋丸」とリベリア船籍の貨物船「パシフィックアレス号」が視認していたのにも関わらずお互いに譲らず衝突事故をお越し、「パシフィックアレス号」が「第十雄洋丸」の右舷船首に食い込んだまま炎上し横須賀に向け漂流を始めました!

「第十雄洋丸」は、2万6千トンの液化石油ガスと、ベトナム戦争でナパーム弾に使用されるほどの爆発力と燃焼力をもつ2万トンのナフサを搭載していました。

このままでは、横須賀は火の海になる!

そこで海上自衛隊に災害派遣命令が下り、「第十雄洋丸」を安全な海域まで曳航し撃沈せよ!

との命令が下り、海上自衛隊の潜水艦が唯一実弾で魚雷を使用し沈めた「第十雄洋丸事件」が収束しました。

フジテレビ系「奇跡体験!アンビリバボー」(11月15日放送)では「大型タンカー炎上事故!東京湾沿岸に壊滅の危機!ついには自衛隊が出動し史上で唯一の実弾使用作戦に!」
と題し、「第十雄洋丸事件」のアンビリバボーな奇跡が紹介されます。

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第十雄洋丸事件とは?

第十雄洋丸事件
自衛隊の艦砲射撃、爆撃、魚雷の雷撃で沈んだタンカー第十雄洋丸

1974年11月9日、東京湾で当時日本最大級のLPGタンカー「第十雄洋丸」の右舷船首にリベリア船籍の貨物船「パシフィックアレス号」が食い込む形で衝突事故を起こしました。

「第十雄洋丸」に積載されていた米軍のナパーム弾に使われる程、可燃性の高いナフサに引火し瞬く間に大爆発を起こすと、両船は猛火に包まれていきました。

さらにナフサが海上に流出し、文字通り「火の海」と化して行きます!

第三管区海上保安庁の消防船と巡視船、東京消防庁、横浜市消防局、更に民間の港湾作業船も消化に加わりました。

が、激突したままの姿で炎上する2隻は、強風にあおられて横須賀方向へと漂流を始め、このままでは横須賀港に激突し、最悪、市街地にも被害が及ぶ恐れが!

海上保安庁は、決死の覚悟で、「パシフィック・アレス」に乗り移り、「第十雄洋丸」に食い込んだ船体を引き離す事に成功し炎も沈静化に成功させました。

一方「第十雄洋丸」は、事故発生から10日にして曳航され千葉方面の浅瀬に座礁させることに成功しました。

この頃、海上保安庁には大型船舶を曳航できる機材はなく、深田サルベージ建設に曳航を依頼しました。

 その為、民間タグボート「大安丸」と「大成丸」で曳航を行いました。

座礁させた上で「第十雄洋丸」は、ナフサやプロパンなどの燃料燃やし尽くす予定でしたが、これに対し当然沿岸の養殖業者などが、海苔への汚染により生活に支障をきたすと大反発しました。

その為、炎上したまま太平洋上まで曳航し直し、漁の影響が無い場所で燃やし尽くすことになりました。

自衛隊に災害派遣要請が!

しかし、太平洋へ向けて再度の曳航を開始し、東京湾を離れ、目的地の目前に迫った所で再びナフサが大爆発を起こし、曳索(曳航する綱)が千切れ漂流を始めてしまいました。

炎は船内の全ての貯蔵庫に回り、大炎上となりました。

タイミング悪く黒潮の潮流により流され漂流を初めてしまいました。。

海上保安庁では手に負えない甚大な災害と認定しました。

そして「災害派遣要請」が、海上保安庁長官より自衛隊に対して出されました。

ここに「第十雄洋丸」の処分を目的とする海上自衛隊始まって以来の、武器を用いた災害派遣が決定されました。

海上保安庁からの災害派遣要請に鑑み、後の第75代内閣総理大臣となる宇野宗佑(うの そうすけ)防衛庁長官(当時)より海上自衛隊(自衛艦隊司令官・中村悌次)への出動命令が下されました。

現地に派遣される艦隊は、

護衛艦「はるな(DDH-141)」「たかつき(DD-164)」「もちづき(DD-166)」「ゆきかぜ(DD-102)」
潜水艦「なるしお(SS-569)」増援部隊として「はるしお(SS-563)」

更に上空からの支援で、P-2J対潜哨戒機、更に護衛艦「はるな」のHSS-2対潜ヘリコプター

の構成でした。

当初の作戦計画は・・・

1.艦砲射撃やP-2Jから放たれるロケット弾により爆撃を加える。
それにより、タンクを直撃する事で、ナフサなどの燃料を燃やし尽くす。
2.潜水艦の魚雷により船体に穴をあけて撃沈処分。

というシンプルな計画でした。

しかし、タンカーは安全性の観点から軍艦の装甲で使用する高張力鋼に匹敵する特殊鋼で浸水しにくい堅牢な構造でに造られており、軍艦よりも沈みにくい事が後に判明したのでした。

11月26日護衛艦「はるな」を始めとする艦隊が「第十雄洋丸」目指し横須賀を出港しました。

11月27日に現場に到着し、海上保安庁の巡視船が監視の元、時折火柱を上げて燃え盛りゆっくりと漂流「第十雄洋丸」を補足しました。

対潜哨戒機P-2Jと護衛艦「はるな」から飛び立ったHSS-2対潜ヘリコプターが状況調査に加わり、4隻の護衛艦は、単縦陣(艦隊の各艦が縦一列に並ぶ陣形)を組み艦砲射撃の準備を整えました。

砲撃命令が下り、「第十雄洋丸」の右舷側に4隻の護衛艦が、合計9門の5インチ(127mm)砲で一斉に砲撃を行いました。

合計36発の砲弾は吸い込まれる様に全弾右舷外板に命中し大きな火柱が上がりました。

今度は、左舷側に移動し、全36発をその船体に叩き込み、計画通り大爆発が起こりました。

その火柱は高さ100mにのぼり、黒煙は実に2500mにまで達したと云われています。

川崎/ロッキード P-2J「おおわし」
乗員:12名
全長:29.7m
全幅:30.9m
全高:8.9m
翼面積:
全備重量:36,288kg
エンジン:IHI(GE) T64-IHI-10E×2・IHI J3-IHI-7D×2
出力: T64 – 3,060馬力×2、J3 – 1,550kgf×2
最大速度:635km/h=M0.52(高度3,050m)
航続距離:
実用上昇限度:
武装:Mk44ホーミング魚雷×4、150kg対潜爆弾×16、127mmロケット弾×8

翌11月27日朝、4機のP-2Jが高度1500mから急降下し、127mm対潜ロケット弾12発を発射。

ロケット弾は甲板に命中し、またも大爆発が起こりました。

続きに対潜爆弾16発を投下、甲板に大きな穴が開き、火災は更に激くなりました。

この攻撃により積み荷の燃料が燃え船体が軽くなり始めました。

すると浮力が増し、水中に接する面が少なくなり、次の攻撃である潜水艦による魚雷攻撃の照準が一層難しくなります。

魚雷は発射前に水深を測って何メートルの水深で進むるかをセッティングする必要があります。

もし水深の設定を誤ると船体の下を潜り抜け、誤って近くに航行する船に誤爆する可能性があるからです。

いよいよ船体に大穴を開け浸水させ沈没を目的とする潜水艦「なるしお」のMk.37魚雷の発射準備に入ります。

そして4本の魚雷が発射され命中しました。

しかし堅牢なタンカーは船体が複数の部屋の様な構造で構成されている為、浸水した海水が船体深く入り込む事がなく中々沈みません。

第二次大戦中、日本海軍の大和型戦艦、大和、武蔵が10本以上の魚雷を受けても沈まなかったのも同じ構造だったからです。

続いて3度目の艦砲射撃により火災は更に激しさを増しますが、一向に「第十雄洋丸」は沈む気配はありません。

自衛艦隊司令部は増援部隊として呉で待機中の潜水艦「はるしお」に出動命令を下しました。

皮肉にも潜水艦「はるしお」が呉を出港してすぐ、「第十雄洋丸」には、数回に渡る大爆発が起こり、後部から沈み初め、やがて後部甲板まで飲み込まれていきました。

海中から「なるしお」も浮上し、すべての船がその様子を、固唾をのんで見守りました。

つぎつぎとタンクの積み荷の燃料が爆発し、300mを超える火柱となりました。

遂に衝突事故から20日経った11月28日18時47分、「第十雄洋丸」は、船首を天にかざすように屹立すると大渦を発生させながら海底へとその姿を消していきました。

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「第十雄洋丸」

【船種】タンカー
【乗員】
【船籍】日本
【ペイロード】総トン数43,723トン
【ライトナフサ】20,831キロトン
【プロパン】20,202キロトン
【ブタン】6,443キロトン
【被害者】死者5名、生存者34名

「パシフィックアレス号」

【船種】鋼材運搬船
【乗員】台湾籍の船長ほか船員 28人
【船籍】リベリア
【鋼材】14,835キロトン
【被害者】死者28名、生存者1名

「第十雄洋丸」が不沈艦の理由

毎日新聞の見出しには「強すぎた日本タンカー」と書かれた程堅牢な船で攻撃に向かった自衛官は「不沈艦」と漏らしました。

その理由を簡単にまとめてみました。

燃料が水より軽い
→ナフサは水より軽い為、流出もしくは燃焼させなければ、浮力の効果を果たし沈みにくさの要因となる。

船体の構造
第十雄洋丸の場合、船体が小さな区画(合計16の区画)に区切られて一つの船体が構造化されており、1箇所に穴をあけてもその部分のみが浸水するのみで船全体が浸水しない様設計されている。

船体の底が二重底、燃料タンクに至っては三重構造で堅牢な為、穴が開いても浸水し難い。

(燃料タンクは、気化爆発や事故を防ぐ為に軍艦の装甲で使用する高張力鋼に匹敵する特殊鋼がタンク上部10mm、タンク下部15.5mm、船体に20mmの厚さで作られていたそうです)

などが問題となりました。

もしもの時を考えて燃料の流出を防止する為に設計された堅牢な構造が仇になっていたのでした。

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兵装

Mk.37魚雷
この魚雷は本来、目標のスクリューなどの音を補足し、自動追尾するホーミング魚雷です。

その為、機関停止中の第十雄洋丸に対して、目測で攻撃出来るようセッティングが必要で、「はるしお」は母港・呉で設定を行う必要があり、出港が遅れました。

燃料が燃え尽き船体が軽くなった為、船体が浮きやすくなってしまった為、喫水線の位置が代わり船底の位置が高くなってしまい船底を通過してしまい不発に終わった魚雷も有りました。

過失

このブログの管理人のもりもりは、船舶免状を持っているのですが、受験の際、学校で車と違って船は過失割合というものは無いと教わりました。

その理由の主なものは船は車と違い急には止まれない!

というのが理由でした。

そして、重要なのは「優先権」というものでした。

これは単純に大きな船は速度を簡単に落とせない上、舵の効きも遅い、という観点によるものです。

しかし、今回は微妙な海域で起こった事故です。

第十雄洋丸は「海上交通安全法」(国により異なる)の「航路優先の原則」

航路を出入りしようとしたり、横断しようとする船舶は航路を航行中の船舶の針路を避ける。

にのっとり運航。

 一方、パシフィック・アレスは

「海上衝突予防法」(世界共通の海上交通のルール)に基づく

「スターボード艇優先の原則」の動力船に対しての法律で

第15条 2隻の動力船が互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあるときは、他の動力船(B)を右げん側に見る動力船(A)は、当該他の動力船(B)の進路を避けなければならない。

お互いに進路が交差する場合、
右げん側に見る動力船(A)第十雄洋丸事件→
他の動力船(B)→パシフィック・アレス
の考えで第十雄洋丸事件が進路を避けなければならないと考え運航していました。・・

双方が「優先権」を主張しあい、道(航路)を譲らなかった為に起きた人災です。

判決

本件衝突は、パシフィック・アレスの不当運航に因って発生したが、雄洋丸船長の運航に関する職務上の過失もその一因をなすものである。

として雄洋丸船長には、船長の業務を1箇月15日停止の判決がくだされました。

まとめ

海技免状を取得している自分にとって「第十雄洋丸事件」は有り得ない事故と言わざるを得ません。

今回の事件はお互いの船が視認していたにも関わらず、お互いの優先権を盾に「第十雄洋丸事件」の回避行動が遅れた、或いはパシフィック・アレが回避を行わなかった事にあります。

海上で船舶に対し交通安全ルールを定めている「海上交通三法」が有ります。

海上交通三法は「海上衝突予防法」「港則法」「海上交通安全法」を指します。

今回の事件は、そんな法律を遵守していない事が事故を大きくしました。

「第十雄洋丸」「パシフィックアレス号」がお互いに優先権を主張した事が惨事を招きましたが、それ以前の問題で事故を起こさない様に務める事が世界共通の海上交通のルールが定義された「海上衝突予防法」[第4章 音響信号及び発光信号]に定められています。

その中で定義されているのが行動不明な船に対し警笛(汽笛)を鳴らす事が定義されています。

第4章 音響信号及び発光信号(第32条-第37条)
(操船信号及び警告信号)
第34条
航行中の動力船は、前項の規定による汽笛信号を行わなければならない場合は、次の各号に定めるところにより、発光信号を行うことができる。この場合において、その動力船は、その発光信号を10秒以上の間隔で反復して行うことができる。
一 針路を右に転じている場合は、せん光を1回発すること。
二 針路を左に転じている場合は、せん光を2回発すること。

4.互いに他の船舶の視野の内にある船舶が互いに接近する場合において、船舶は、他の船舶の意図若しくは動作を理解することができないとき、又は他の船舶が衝突を避けるために十分な動作をとつていることについて疑いがあるときは、直ちに急速に短音を5回以上鳴らすことにより汽笛信号を行わなければならない。この場合において、その汽笛信号を行う船舶は、急速にせん光を5回以上発することにより発光信号を行うことができる。

今回は、お互いにに右に進路をとるか、左に進路をとるか、を表す汽笛を鳴らしておらず、お互いに回避行動をとるかどうかがわからない状態だった事が考えられます。

その場合5回以上短い汽笛を鳴らして相手の次の行動を促す事が出来ます。

具体的に言うと警告方法は

・他船の意図や動作が理解できない場合

・他船の避航動作に疑いがある場合

警笛を1秒程度の短い時間鳴らす”単音”を5回以上鳴らすと相手に対し

「貴方の船は、何をするのかわからないぞ!」

というメッセージになります。

(車で対向車に対し、クラクションで警告している様なものです)

なので、お互いに単音を5回以上鳴らしていれば警戒しあってお互いに舵を切る回避行動が取れたはずです。

2017年に伊豆半島沖で衝突事故を起こした米イージス駆逐艦フィッツジェラルド衝突事故も汽笛を鳴らして警告していれば避けられたと考えられます。

優先権云々より安全に航海し、事故を避ける事が義務付けられているのに、法を遵守しなかった事がとても残念な結果に終わった事故でした。

本日は最後までご覧いただきありがとうございました。

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